江戸川区の会社設立費用と法人化のタイミング|税理士が解説

東京都江戸川区で活動している公認会計士・税理士の千葉です。

本記事では法人化・会社設立について深堀りし、以下のような疑問にお答えしていきます。

  • 会社設立には掛かる費用は?
  • 会社形態はどうする?株式会社と合同会社のどちらがいい?
  • 江戸川区には創業支援はある?
  • 法人化すると本当に節税になる?
  • どのタイミングで法人化すべき?

法人化は、会社の設立がゴールではなく、事業を軌道に乗せるためのスタートです。
設立時の費用だけでなく、設立後の税金、社会保険料、決算申告料などの継続的に掛かるコストも含めて判断する必要があります。

※本記事は2026年9月時点の制度に基づいています。

  1. 会社設立・法人化する費用はいくら?
    1. 株式会社を設立する場合 約19万2千円〜
    2. 合同会社を設立する場合 約7万2千円〜
    3. 株式会社と合同会社の違い
    4. 株式会社:上場企業のように大規模な出資を募って事業展開できる
    5. 合同会社:費用は抑えながら、法人のメリットを享受できる
  2. 法人化後に継続してかかる費用
    1. 法人住民税の均等割 年間約7万円〜
    2. 社会保険料 役員報酬月額20万円の場合の会社負担は年間約34万円
    3. 会計ソフト利用料 年間約4万円〜
    4. 税理士顧問料 年間約30万円〜
    5. 決算申告・年末調整等の費用:法人の規模や依頼内容による
    6. (登記事項を変更した場合)登記変更:約4万円〜
    7. (株式会社の場合)決算公告料:自社ホームページは0円
  3. 江戸川区で会社を設立するメリット
    1. 【設立時の登録免許税が半額】江戸川区の創業相談、創業塾、起業家支援
    2. 【低利率】創業支援資金融資を利用できる可能性がある
    3. 【家賃補助金】創業促進助成事業を利用できる可能性がある
    4. 【販売促進】区内事業者向け制度を利用できる可能性がある
  4. 東京都の創業助成事業
    1. 【賃料・人件費・委託費の助成】創業助成事業
    2. 【低利率】日本政策金融公庫の融資
  5. 個人事業主と法人の違い
  6. 個人事業主が法人化するメリット
    1. 取引先や金融機関からの信用を得やすい
    2. 所得によっては税負担を抑えられる可能性がある
    3. 役員報酬の設計には裁量があり、状況に合わせて最適な報酬に調整可能
    4. 経費の考え方が変わる
    5. 赤字をより長く繰り越せる
    6. 採用や事業承継を行いやすくなる
  7. 法人化するデメリット
    1. 設立費用がかかる
    2. たとえ赤字でもランニングコストがかかる
    3. 経理・申告が複雑になる
    4. 会社のお金を自由に使えなくなる
    5. 法人化しない方がよいケース
  8. 法人化すると税金・社会保険はどう変わる?
    1. 所得税から法人税中心の課税に変わる
    2. 事業主の生活費は役員報酬として受け取る
    3. 役員報酬は原則として年度途中に自由に変更できない
    4. 法人化すると節税の選択肢は増え、うまく活用するとお得になる
  9. 個人事業主が法人化を検討するタイミング
    1. 利益が継続して増えてきた
    2. 法人でなければ取引できない相手が増えた
    3. 従業員を採用したい
    4. 融資・出資を受けたい
    5. 事業承継を考え始めた
    6. 許認可や入札の関係で法人格が必要になった
  10. 法人化するか迷ったときの判断チェックリスト
  11. 法人化を決めた後に行うこと
  12. 会社設立・法人化に関するよくある質問
    1. 株式会社と合同会社のどちらがよいですか?
    2. 一人でも会社を設立できますか?
    3. 法人化すれば必ず節税できますか?
    4. 売上や利益がいくらになったら法人化すべきですか?どのタイミングで法人化すべきですか?
    5. 法人化すると社会保険への加入は必要ですか?
    6. freeeを使えば完全無料で会社を設立できますか?
    7. 会社設立前に税理士へ相談する必要はありますか?
    8. 登記も税理士に依頼できますか?
  13. まとめ|法人化は設立費用だけでなく設立後の負担まで比較しましょう

会社設立・法人化する費用はいくら?

会社設立にかかる費用は、株式会社と合同会社で異なります。以下の表をご参照ください。

株式会社を設立する場合 約19万2千円〜

費用項目当事務所運営
「会社設立・経理スタート伴走パック」
自分で書類作成専門家に依頼
定款の印紙代・電子定款作成費用0円(紙定款のため)4万円0円
定款認証手数料(*1)資本金100万円未満:3万円
資本金100~299万円:4万円
資本金300万円以上:5万円
登録免許税(*2)15万円
または
資本金額×0.7%

いずれか高い方
定款謄本・証明書等約2千円
法人印(任意)1万円〜
設立支援料・専門家報酬0円0円約5万円〜10万円
合計19万2千円〜約25万円〜約30万円〜
(*1)定款認証手数料は以下の4つの要件をすべて満たせば1万5千円になります。
①資本金100万円未満
②発起人3人以内
③定款に設立時の発行株式の全部を発起人が引き受ける旨がある
④取締役会を設置しない
(*2)登録免許税は江戸川区の制度で半額になる可能性があります。詳しくはこちら。

合同会社を設立する場合 約7万2千円〜

費用項目当事務所運営
「会社設立・経理スタート伴走パック」
自分で書類作成専門家に依頼
定款の印紙代・電子定款作成費用0円(紙定款のため)4万円0円
定款認証手数料0円
登録免許税(*1)6万円
または
資本金額×0.7%

いずれか高い方
定款謄本・証明書等約2千円
法人印(任意)1万円〜
設立支援料・専門家報酬0円0円約5万円〜10万円
合計7万2千円〜約10万2千円〜約15万2千円〜
(*1)登録免許税は江戸川区の制度で半額になる可能性があります。詳しくはこちら。

株式会社は合同会社に比べると、設立費用がそれなりに発生します。
合同会社は定款の認証が不要で、登録免許税の最低額も株式会社より低いため、設立費用を抑えやすい会社形態といえます。

お得な設立支援プランのご案内

千葉豪士税理士事務所では「会社設立・経理スタート伴走パック」をご用意しています。
freee株式会社と提携し、実費のみで会社設立・法人化を行えます。
電子定款のため定款の印紙代が発生せず、設立支援料や専門家報酬は無料です。
法人化をお考えの方には、以下のメリットがあります。

  • ご負担は実費のみ(必ず発生する登録免許税など)
  • 会社設立前から公認会計士・税理士に相談できる!
  • 面倒な設立手続きは専門家に依頼し、本業に集中できる!

株式会社と合同会社の違い

比較項目株式会社合同会社
資本の種類株式持分
資本金資本金1円以上〜資本金1円以上〜
出資者1名以上(株主)1名以上(社員)
出資者の責任有限責任有限責任
最高意思決定機関株主総会社員の過半数
設立費用合同会社より高い株式会社より安い
定款認証必要不要
社会的な認知度高い株式会社より低い場合がある
決算公告必要原則不要
利益配分出資比率による自由
株式による資金調達可能不可
節税効果基本的に同じ基本的に同じ
社会保険原則加入原則加入
上場可能不可
1人会社との相性◯◎
小規模で経営を続ける会社◯◎
将来従業員を増やしたい会社◎◯

株式会社:上場企業のように大規模な出資を募って事業展開できる

株式会社のメリット

  • 将来的には外部から出資を受けたい
  • 従業員をたくさん採用したい
  • 取引上の信用を重視したい
  • 将来的な事業拡大を検討している

株式会社のデメリット

  • 合同会社に比べて設立費用が高い
  • 設立後も決算公告や役員交代の際の登記といったランニングコストが掛かる

合同会社:費用は抑えながら、法人のメリットを享受できる

なるべく費用を抑えながらも、法人として活動したい場合に向いています。
株式会社と税法上の計算方法に変わりはなく、法人化後の節税効果に違いはありません。
個人事業主が節税目的で会社設立し、個人事業を法人として継続していくような場合(いわゆるマイクロ法人)の場合には、設立費用やランニングコストが安い合同会社がおすすめです。

合同会社のメリット

  • 設立費用が安い
  • 設立後の事務負担が少ない
  • 設立後のランニングコストが安い
  • 法人化のメリットは享受できる

合同会社のデメリット

  • 比較的知名度が低いため、取引上の信用が劣る可能性がある
  • 従業員採用の際に敬遠されてしまう可能性がある

株式会社と合同会社をどちらにするか迷われている方は、将来的に会社をどうしたいかを考えて選択するといいでしょう。

法人化後に継続してかかる費用

法人は設立して終わりではなく、毎年一定の維持費・ランニングコストがかかります。
例えば、代表者1人・役員報酬月20万円程度の小規模法人を考えると以下になります。

法人住民税の均等割約7万円〜
社会保険料の会社負担分約34万円
会計ソフト利用料約4万円〜
税理士顧問料約30万円〜

法人化を検討するときは、設立時の費用だけでなく、設立後に毎年どの程度のコストが発生するかも確認しておくことが重要です。

以下は一般的に法人化後に掛かる費用です。

法人住民税の均等割 年間約7万円〜

例えば東京都23区内にのみ事務所があり、資本金等が1,000万円以下、従業者数が50人以下の法人では、法人都民税均等割の年額は原則7万円です。
均等割は、会社が赤字の場合でも原則として発生します。
設立初年度が12か月未満の場合は、事務所を有していた月数に応じて計算されます。

社会保険料 役員報酬月額20万円の場合の会社負担は年間約34万円

法人の事業所は、代表者一人だけの場合を含め、原則として健康保険・厚生年金保険の適用事業所になります。
社会保険料は会社と加入者がそれぞれ負担するため、法人側にも継続的な支出が生じます。
特に設立初年度など法人の利益が不十分な場合においても、役員報酬の設定額に応じて社会保険料の支払が発生するため、法人化の判断の際に留意すべきポイントになります。

例えば39歳以下の方が役員報酬を月額20万円に設定しているとすると、支払額は以下のようになります。

内訳計算月額年額年額(会社負担分)
健康保険料200,000円 × 9.85%19,700円236,400円118,200円
子ども・子育て支援金200,000円 × 0.23%460円5,520円2,760円
厚生年金保険料200,000円 × 18.30%36,600円439,200円219,600円
合計–56,760円681,120円340,560円
※子ども子育て拠出金は少額のため除いています。

会計ソフト利用料 年間約4万円〜

freee会計などの会計ソフト利用料が必要です。
エクセルなどで管理することも不可能ではないですが、会計帳簿の作成に特化したソフトを利用することに比べて、圧倒的に効率が劣るので、こちらもほぼ必須と言えます。

会計ソフトは記帳機能に加えて、下記のような機能を追加するごとに利用料が従量課金されるものがほとんどです。

  • 従業員の給与計算の必要があるか
  • 請求書の作成は必要となるか
  • 原価計算(例えば工場のように商品ごとに発生した原価を管理するなど)が必要となるか

例えば業界最大手の会計ソフトfreeeであれば、月額2,980円から使用できます。

税理士顧問料 年間約30万円〜

法人では、法人税、法人住民税、法人事業税、消費税などの申告が必要です。
法人税務は個人事業主の税務に比べて複雑であるため、税務調査に耐えうる申告を行うためにも、税理士への依頼はほぼ必須となります。

税理士へ依頼する場合は、月額顧問料や決算申告料が発生します。
あくまで目安になりますが、年間で30万円程〜が相場です。

決算申告・年末調整等の費用:法人の規模や依頼内容による

役員や従業員へ給与を支払う場合は、次の業務も発生します。
自社で対応するか、税理士・社会保険労務士等へ依頼するかによって費用は変わります。

業務ざっくりとした相場主な依頼先
給与計算1,000〜3,000円/人・月税理士・社労士
源泉所得税の納付手続5,000〜10,000円/回税理士
年末調整2,000〜5,000円/人税理士
給与支払報告書500〜3,000円/人程度税理士
法定調書合計表年間基本料金:10,000〜20,000円程度
従量料金:1,000〜3,000円/件
税理士
算定基礎届20,000〜30,000円程度社労士
労働保険年度更新20,000〜30,000円程度社労士

(登記事項を変更した場合)登記変更:約4万円〜

本店所在地、商号、事業目的、役員などの登記事項を変更した場合は、変更登記が必要です。
掛かる費用は以下です。

登録免許税(資本金1億円以下)1万円
登録免許税(資本金1億円超)3万円
専門家報酬平均3万円

また会社を解散・清算する場合にも、登記、税務申告、専門家報酬等の費用がかかることがあります。

(株式会社の場合)決算公告料:自社ホームページは0円

株式会社では、役員の任期満了に伴う変更登記や、毎期の決算公告も必要になります。

官報公告約6万円
全国紙(日経など)10~100万円程度
自社HPなどでの電子公告0円

江戸川区で会社を設立するメリット

江戸川区では要件を満たせば、公的機関への相談、有利な条件の融資、助成制度を利用できる可能性があります。

【設立時の登録免許税が半額】江戸川区の創業相談、創業塾、起業家支援

江戸川区では、中小企業相談室、起業家アドバイザー派遣、創業塾などの創業支援を実施しています。
経営、財務、人材育成、販路開拓など、創業時に必要な知識を学べる機会があります。
開催中の支援メニューは、江戸川区の創業支援ページで確認できます。

特に以下は特定創業支援等事業に認定されており、受講した場合には会社設立の際の登録免許税が半額となります。

  • えどがわ起業家ゼミナール
  • 朝日創業塾
  • こましん創業塾
  • えどがわ創業塾
  • ひがしん創業塾

受講に手間は掛かるので、登録免許税の割引だけを目的に受講すると割に合わない可能性はあります。
一方で起業にあたっての心得を習得できるワークショップとなっているので、インプットをしたうえで起業したい方にとっては、受講する価値があると言えるでしょう。

EDONOWAという江戸川区が主催する起業家が集まるコミュニティも充実しています。

【低利率】創業支援資金融資を利用できる可能性がある

江戸川区には、区内で創業する方や、創業後間もない中小企業者等を対象とした創業支援資金融資があります。

2026年度の主な条件は次のとおりです。

項目内容
融資限度額2,000万円
返済期間7年以内
据置期間1年以内
年利率2.0%以内
利子補給1.5%以内
本人実質負担0.5%
信用保証料全額補助

一般的に利用される日本政策金融公庫の創業融資の基準利率が2026年9月現在で3.75%から5.35%です。
利子は利子補給も踏まえると0.5%であり、信用保証料も補助があるため、かなり有利な条件と言えるでしょう。

申込みから融資実行までには、区の経営診断や金融機関・信用保証協会の審査があり、3か月程度かかるので余裕を持って申請が必要となります。

対象者や必要書類は、江戸川区の創業支援資金融資で確認できます。

【家賃補助金】創業促進助成事業を利用できる可能性がある

令和8年度募集は終了していますが、来年も募集があると思われます。

江戸川区では事務所等の賃料について、30万円までの助成を6ヶ月ごと、かつ最大2年間受けることが可能です。
創業後3年未満、もしくは6ヶ月以内に創業予定の方が対象となります。
要件は、江戸川区の創業促進助成事業で確認可能です。

【販売促進】区内事業者向け制度を利用できる可能性がある

江戸川区には、区内の小規模事業者を対象とした登録制度があります。
要件を満たして登録すると、区が発注する一定の小規模工事、物品購入、修繕、委託等について、受注機会を得られる可能性があります。
この制度は法人だけでなく、一定の個人事業主も対象です。
詳細は、江戸川区小規模事業者登録制度をご確認ください。

東京都の創業助成事業

【賃料・人件費・委託費の助成】創業助成事業

東京都と東京都中小企業振興公社では、都内で創業を予定している方や、創業後一定期間内の中小企業者等を対象に、創業助成事業を実施しています。

2026年度の主な内容は次のとおりです。

項目内容
助成率対象経費の3分の2以内
助成限度額上限400万円
主な対象経費賃借料、広告費、器具備品購入費、従業員人件費、市場調査費等
対象期間交付決定日から6か月以上、最長2年

申請資格や募集期間が定められており、審査もあります。
最新情報は、東京都中小企業振興公社の創業助成事業で確認できます。

【低利率】日本政策金融公庫の融資

日本政策金融公庫には、新たに事業を始める方または事業開始後おおむね7年以内の方を対象とする「新規開業・スタートアップ支援資金」があります。

2026年9月時点の主な内容は次のとおりです。

項目内容
融資限度額7,200万円
設備資金の返済期間20年以内
運転資金の返済期間10年以内
据置期間原則5年以内
利率基準利率または一定要件による特別利率

実際の融資額や条件は、事業実績、事業計画、返済可能性、資金使途等の審査によって決まります。
詳細は、日本政策金融公庫の新規開業・スタートアップ支援資金で確認できます。

個人事業主と法人の違い

ここからは個人事業主が法人化するメリット、法人化するタイミングを簡単に解説していきます。
以下は個人事業主と法人の主な違いをまとめたものです。

比較項目個人事業主法人
主な税金所得税・住民税・個人事業税・消費税等法人税・法人住民税・法人事業税・消費税等
税率の特徴所得税は累進税率法人所得に法人税等が課税される
事業主の給与自分への給与は必要経費にならない一定の役員報酬は損金算入できる
社会保険国民健康保険・国民年金が基本健康保険・厚生年金が原則
責任の範囲原則として事業主が負う出資者は原則として有限責任
社会的信用法人より低く評価される場合がある法人であることを取引条件とする企業もある
資金調達事業主個人として借入れ法人として融資・出資を受けられる
経理・申告比較的簡素複雑
赤字の繰越し青色申告は原則3年間青色申告法人は原則10年間
事業承継資産や契約を個別に引き継ぐ株式や持分を通じて承継できる場合がある
設立費用原則不要登録免許税等が必要
維持費比較的少ない均等割、申告、社会保険等の負担がある

個人事業主が法人化するメリット

取引先や金融機関からの信用を得やすい

法人は、商号、本店所在地、資本金、役員等の情報が登記されます。
取引先によっては法人であることを契約条件としていることもあり、法人化によって取引の選択肢が増える可能性があります。

ただし、法人化しただけで信用力が決まるわけではありません。設立後の売上、利益、資金繰り、申告・納税状況なども重要です。

所得によっては税負担を抑えられる可能性がある

個人事業主には所得税の累進税率が適用されるため、所得が増えるほど高い税率が適用されます。
法人化後は、役員報酬を控除後の利益に法人税等が課され、代表者が受け取る役員報酬には所得税・住民税等が課されます。
利益と役員報酬の設定をちょうどいいバランスにすると、個人事業主を続ける場合より税負担を抑えられる可能性があります。

一方で法人化した場合には、社会保険料、法人住民税、税理士報酬などのランニングコストが負担として増えるため、全体で比較する必要があります。

役員報酬の設計には裁量があり、状況に合わせて最適な報酬に調整可能

個人事業主が自分に給与を支払っても、事業所得の必要経費にはできません。
法人から代表者へ支給する役員報酬は、一定の要件を満たせば法人の損金に算入できます。
法人から受け取った役員報酬は、代表者個人の給与所得となり給与所得控除を適用できます。
役員報酬を状況に合わせて調整することで、発生する税金を最適化することが可能です。

経費の考え方が変わる

法人化すると、役員報酬、社用車、社宅、退職金、保険契約など、個人事業とは異なる仕組みを検討できる場合があり、より幅広い節税が可能となります。

ただし、法人名義で支払えば何でも経費になるわけではなく、事業との関連性、契約内容、税法上の要件、金額の妥当性などが必要となります。

赤字をより長く繰り越せる

個人事業主の青色申告では、純損失の繰越期間は原則3年間です。
青色申告法人では、一定の要件を満たせば欠損金を原則10年間繰り越せます。
創業初期に設備投資や採用を行い、赤字が先行する事業ではメリットになることがあります。

採用や事業承継を行いやすくなる

法人化によって、採用時に安心感を持たれることがあります。

事業承継の際、個人事業では資産や契約を個別に引き継ぐ必要がありますが、法人では株式や持分の承継によって事業を継続できる場合があります。

法人化するデメリット

設立費用がかかる

上述したとおり原則として、株式会社では15万円〜、合同会社では6万円〜の登録免許税が必要です。
このほか、株式会社の定款認証手数料、法人印、証明書取得費用、専門家報酬などが発生します。

たとえ赤字でもランニングコストがかかる

「法人化後に継続してかかる費用」の章で説明したとおり、法人住民税の均等割や社会保険料、税理士費用や会計ソフト利用料などが発生します。
十分な売上がないとこれらは回収することができないため、法人化のタイミングは見極める必要があります。

経理・申告が複雑になる

法人では、会社と代表者個人のお金を明確に区別する必要があります。
法人税申告書の作成も個人の確定申告より複雑になるため、経理や申告の事務負担が増えます。

会社のお金を自由に使えなくなる

会社のお金は代表者個人のものではありません。会社の財布と個人の財布は分けて管理する必要があります。
代表者が受け取る方法は、役員報酬、経費精算、配当、会社への貸付金の返済などに限られ、それぞれ所定の手続きや税務上の取扱いがあります。

法律の範囲で賢くやり繰りをすることで、法人化のメリットを最大限発揮できます。

法人化しない方がよいケース

次のような場合は、法人化を急がない方がよいこともあります。

  • 利益がまだ安定していない
  • 法人のランニングコストを継続的に負担できない
  • 社会保険料を含めると負担が大きくなる
  • 今後の事業継続が不透明
  • 法人格によって増える取引が見込めない
  • 採用や資金調達の予定がない
  • 経理・申告の事務負担を増やしたくない

法人化すると税金・社会保険はどう変わる?

所得税から法人税中心の課税に変わる

個人事業主は、事業所得を含む個人の所得に対して所得税・住民税等が課されます。
法人化後は、法人の利益に法人税、法人住民税、法人事業税等が課されます。代表者個人には、法人から受け取る役員報酬等に対して所得税・住民税が課されます。

事業主の生活費は役員報酬として受け取る

法人化後は、会社の売上代金を代表者がそのまま生活費に使うことはできません。
毎月の役員報酬を設定し、その中から生活費を支払うのが基本です。

役員報酬を高くすれば法人の利益は減りますが、代表者個人の所得税、住民税、社会保険料は増える可能性があります。

役員報酬は原則として年度途中に自由に変更できない

役員報酬を法人の損金に算入するためには、定期同額給与などの法人税法上の要件を満たす必要があります。
通常は事業年度開始から3か月以内に金額を決定し、その後は毎月同額で支給します。

売上が増えた、資金繰りが厳しくなったという理由だけで年度途中に変更すると、一部が損金として認められない場合があり、損してしまう場合があります。事業年度開始時点で今後の1年間を見据えて設定する必要があります。

法人化すると節税の選択肢は増え、うまく活用するとお得になる

法人税法を例に様々なルールに沿って検討していく必要があるので、法人化は複雑にはなるものの、うまく活用するとお得です。

以下はいくつかの例になります。法人化することによって節税の選択肢が広がると言えるでしょう。

  • 出張旅費規程の設定
    個人事業主の場合は交通費や宿泊費のみの実費が損金となりますが、法人の場合は日当も損金として扱えます。
    この日当は所得税法上も非課税なので、所得税が掛からず、社会保険料も増加しません。
    法人にとっても、個人にとってもメリットがあります。
  • 社宅規定の設定
    月15万円の賃貸住宅に住む場合、個人名義で契約して個人が家賃を支払っても、会社の経費にはなりません。
    一方、法人名義で住宅を借りて役員に社宅として貸与すると、会社が支払う家賃を賃借料として経費計上できます。役員は、税法上計算される「賃貸料相当額」を会社へ支払うことで、原則として社宅による経済的利益について給与課税を受けずに住むことができます。
    例えば、会社が月15万円の家賃を支払い、小規模住宅に該当し、税法上の賃貸料相当額が月5万円の場合、役員が会社へ5万円を支払います。この場合、会社の実質的な家賃負担は月10万円となります。
    個人が税引後の役員報酬から家賃15万円を支払う場合と比較すると、法人社宅を活用することで、税金や社会保険料を含めた負担を抑えられる可能性があります。
  • 個人名義の車を法人名義にする
    役員の個人名義の車を法人名義にすることで、減価償却費を法人の損金にすることができます。また実際にかかったガソリン代や高速代を精算して法人の損金にするとともに、車検代や保険料、修理費用も法人の損金とすることができます。

個人事業主が法人化を検討するタイミング

利益が継続して増えてきた

法人化を判断するときは、売上だけでなく利益を見ることが重要です。
売上が大きくても、仕入れや外注費が多く、利益が少なければ、法人化による税負担軽減効果は限定的です。
一時的に利益が増えた場合ではなく、今後も一定以上の利益が続くかを確認します。

個人事業主の所得税は累進課税であり、課税所得が900万円を超えると、その超過部分には33%の税率が適用されます。
一方、一般的な中小法人では、年間所得800万円以下の部分について法人税率15%、800万円を超える部分について23.2%が適用されます。
そのため、所得が増加するほど、法人化による税率面のメリットを検討する重要性が高まります。

ただし、法人化による節税効果は、役員報酬の設定や社会保険料の負担、法人の維持費などによっても変わります。
課税所得900万円は一つの検討目安になりますが、それより所得が低い場合でも、法人化によって税負担を軽減できる可能性があります。

法人でなければ取引できない相手が増えた

取引先の社内規程によって、法人でないと契約しない企業もあります。
法人化によって新たな取引が見込める場合は、税金以外の効果も含めて検討できます。

従業員を採用したい

法人化によって、採用時の信頼感が高まることがあります。
社会保険、給与計算、就業規則、福利厚生など、採用後の体制を整えるきっかけにもなります。

融資・出資を受けたい

法人化すると、法人名義で融資を受けられます。
株式会社では、株式を発行して外部から出資を受けることも可能です。

ただし、設立直後の法人には実績がないため、代表者の経験、個人事業時代の実績、事業計画、自己資金、資金使途などが審査されます。

事業承継を考え始めた

将来的に親族、従業員、第三者へ事業を引き継ぎたい場合は、株式や持分を譲渡する形となり法人化によって承継しやすくなります。

許認可や入札の関係で法人格が必要になった

業種や取引内容によっては、法人格が必要または有利になることがあります。

一方、個人事業で取得した許認可を法人へそのまま引き継げない場合もあります。許認可が必要な業種では、会社設立前の確認が必要です。

法人化するか迷ったときの判断チェックリスト

次の項目を確認してみましょう。

  • ご自身の事業をやり抜いて、成長させるという強い意志がある
  • 直近2~3年の利益が安定している
  • 今後も売上・利益の増加を見込める
  • 法人でなければ契約できない取引先がある
  • 法人化によって新しい仕事を受注できる
  • 従業員を採用する予定がある
  • 金融機関から融資を受けたい
  • 外部から出資を受けたい
  • 将来的に事業承継や売却を考えている

該当する項目が多いほど、法人化を具体的に検討する時期に入っていると考えられます。

ただし、該当数だけで法人化の有利・不利が決まるわけではありません。現在の利益、役員報酬、家族構成、社会保険料、消費税、今後の事業計画を含めて比較していく必要があります。

法人化を決めた後に行うこと

法人化を決めたら、商号、本店所在地、資本金、決算月、役員報酬などを決定し、定款や登記書類を作成します。
会社設立後には、税務署、東京都、年金事務所等への届出や、個人事業から法人への資産・契約の引継ぎ、freee会計の初期設定なども必要です。

具体的な手順については、別記事で詳しく解説します。

会社設立・法人化に関するよくある質問

株式会社と合同会社のどちらがよいですか?

取引上の信用、将来の出資、採用、事業拡大を重視する場合は株式会社が向いています。
少人数で運営し、設立費用や事務負担を抑えたい場合は合同会社も選択肢になります。

一人でも会社を設立できますか?

株式会社・合同会社ともに一人で設立できます。
一人で出資し、自分が代表者になることも可能です。

法人化すれば必ず節税できますか?

必ず節税できるわけではありません。
法人化によって税負担を抑えられる場合がありますが、社会保険料、法人住民税、税理士報酬などの負担も増えることになります。
個人と法人の全体を検討して、タイミングを見計らって法人化を目指す必要があります。

売上や利益がいくらになったら法人化すべきですか?どのタイミングで法人化すべきですか?

売上や利益だけでは厳密には判断できません。
社会保険料、取引先の要請、採用計画、消費税、家族構成、今後の事業計画などによって判断が変わります。

一般的には所得税法上の累進課税の税率と法人に掛かる税率との対比によって、個人事業の利益(儲け、手残り)が800万円から900万円を超えたときと言われています。

一方で個人的には机上の計算も重要ではある一方で、ご自身の事業をやり抜き、成長させるという強い意志がある場合には先に法人化してしまうことも選択肢の一つと考えています。
法人という箱があれば、そこに見合う事業を埋めたくなるものなので、より覚悟が固まり、成功する確率が高まるという場合もあるからです。

法人化すると社会保険への加入は必要ですか?

法人事業所は、代表者一人の場合を含め、原則として健康保険・厚生年金保険への加入が必要です。

freeeを使えば完全無料で会社を設立できますか?

会社設立そのものが無料になるわけではありません。
登録免許税、株式会社の定款認証手数料、証明書取得費用などの実費が必要です。

会社設立前に税理士へ相談する必要はありますか?

必須ではありませんが、状況の整理が可能となり、やるべきことが明確になると考えられるため、設立前の相談をおすすめしています。
資本金、決算月、役員報酬、消費税上のインボイス登録を行うかなど、設立後の税金や資金繰りに影響します。

登記も税理士に依頼できますか?

税理士が会社設立登記を代理することはできませんが、当事務所ではfreee株式会社と提携しています。
設立関連の書類作成や、登記の申請はfreee株式会社の方と連携し対応します。

まとめ|法人化は設立費用だけでなく設立後の負担まで比較しましょう

会社設立に必要な費用の目安は、株式会社が約16万7,000円~24万2,000円、合同会社が約6万2,000円~10万2,000円です。

当事務所では、所定の条件を満たす方に会社設立・経理スタート伴走パックをご案内しています。
自分で書類を揃えて設立するよりも、費用面では負担を約9万円抑えられ、手間の面でも大きく抑えられます。

ただし法人化の判断で重要なのは設立費用だけではなく、以下を含めて検討する必要があります。

  • 法人住民税
  • 社会保険料
  • 税理士・会計ソフト費用
  • 法人税等
  • 代表者個人の所得税・住民税
  • 設立後の経理・申告事務
  • 法人化によって増える取引や採用の可能性

千葉豪士税理士事務所では、設立前の判断から、freeeと提携した会社設立、設立後の税務・会計、月次決算まで一貫して支援しています。

コメント

タイトルとURLをコピーしました